研究
研究
高齢者に対するBGMの効果研究

公開日:2021年4月8日

高齢者に対するBGMの効果研究

BGMは高齢者の健康に良い!?

国民の4人に1人が65歳以上の高齢者である日本。医学の進歩と、1人1人の健康意識が高まったことから、平均寿命は著しく伸びています。皆さんは平均寿命の他に、健康寿命というものはご存知でしょうか。
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、生涯で、健康に過ごせた期間を指します。平均寿命と健康寿命の乖離は男性では約9年間、女性では約13年間。寿命は延びていても、その一生の間ずっと健康でいられるわけではなく、平均で9~13年間は何かしらの疾患や闘病がつきまとう可能性があるということです。平均寿命が延びることで免疫力低下や認知症発症のリスクも増えているのです。もちろん医療の進歩によって平均寿命と健康寿命の乖離は少しずつ改善されているものの、まだまだその差が埋まるまでは時間がかかるでしょう。たとえ歳を重ねても、少しでも健康に楽しく暮らしたいですよね。
USENでは、音楽で健康な生活のお手伝いができないかと、高齢者を対象に検証実験を実施しました。

実験概要

音楽が高齢者に対してどのような効果をもたらすのかを調べるため、埼玉医科大学短期大学・和合治久名誉教授監修のもと、実験を行いました。対象は80歳以上の高齢者15名。音楽を聴く前と聴いた後で唾液成分の分析と体温測定を行いました。
この実験では、ヒーリング性の高いUSENの3つの既存番組から、C-20「ミュージック・セラピー ~心の癒し~」、J-24「癒し空間BGM ~α波の誘い~」、J-10「Piano Compilation」の代表楽曲を使用しました。

結果

まずは唾液について見ていきましょう。
右のグラフは唾液の分泌量への影響を表したグラフです。このグラフから、唾液の分泌量は音楽を聴いた後、増加していることがわかりますね。よって音楽にはドライマウス改善の効果が期待できると言えます。

グラフ画像
唾液分泌量(ml)

また、下の写真は参加者の音楽聴取前後の唾液量を測ったものです。左が聴取前、右が聴取後のもの。写真で見ると、その差は一目瞭然ですね。通常、参加者1のパターンが多いのです。


グラフ画像

では次に唾液中の成分について見ていきます。
このグラフはIgA(※)濃度の数値を表したものです。
このグラフでは唾液中のIgA数値は音楽を聴いた後に増加していますね。

※ IgA:免疫物質の一種で、低下すると病気にかかりやすくなる。

グラフ画像
IgA濃度(μg/ml)

次にこのグラフは唾液中のコルチゾール(※)濃度の数値を表しています。
このグラフから音楽を聴いた後、コルチゾール濃度の数値は減少していることがわかります。

※コルチゾール:ホルモンの一種で不快なストレスや睡眠不足によって副腎皮質から過剰に分泌され、血糖値を高めたり免疫機能を低下させる作用を引き起こします。

グラフ画像
コルチゾール濃度(μg/dl)

最後に、体温について見てみましょう。このグラフは、音楽を聴く前と聴いた後の手の甲の温度を表しています。音楽を聴いた後、体温が上昇していることがわかりますね。したがって音楽で体温を上げる、冷え性を改善する効果が期待できると言えます。

グラフ画像
手の甲の温度(℃)




以上、健康の指標となる4つの数値はBGMを聴くことによって良くなる傾向がみられました。

監修者からのコメント

和合治久名誉教授
埼玉医科大学短期大学 和合治久名誉教授/1950年生まれ。東京農工大学大学院博士課程終了後、京都大学で理学博士取得。免疫音楽療法学などが専門。

<監修>埼玉医科大学短期大学 和合治久名誉教授

有効な音楽に聴き入ることで、現代の高齢者で問題になっている認知症、誤嚥性肺炎、免疫力低下、冷え性、便秘症などが改善できれば、音楽療法は高齢者の健康を守る上で有効なツールになると考えられます。今回の実験から、
(a)唾液の分泌が高まり、ドライマウスの改善に役立ったり歯周病の予防にも役立つこと

(b)唾液中のIgAが増加して、口腔内の免疫力が高まり、誤嚥性肺炎の防止に役立つこと

(c)コルチゾールが減少する傾向が強く、ストレスが減少し、同時に認知症の改善にも 役立つこと(アルツハイマー型認知症とコルチゾール値の高さとの間に因果関係 があるため)

(d)体温が上昇して体の冷え性が改善すること などが強く示唆されました。以上の観点から、音楽を高齢者施設等で活用することは、高齢者の健康寿命の延伸に大いに役立つものと期待されます。

おすすめ番組

USEN番組

【健康BGM】シニアのためのヒーリング

心身の健康を支援する「健康BGM」シリーズ。埼玉医科大学短期大学・和合治久名誉教授監修のもと行った実験結果から、副交感神経の働きを高めリラックスに導くスロー~ミディアムテンポのヒーリング楽曲をAI学習による選曲でお送りします。懐かしい童謡や唱歌、流行歌のインストゥルメンタルカバーを織り交ぜながら、アコースティックな優しい音色をお届けします。



※詳しくは、お客様が加入されている各サービスのホームページをご覧ください。
USEN MUSIC GUIDEリンクアイコン
Sound Design for OFFICEリンクアイコン




【参考文献】
2016簡易生命表(厚生労働省)



【免責事項】
・本ページの実験結果は、各種実験業務の委託により得た分析結果を記載したものです。当社並びに当該分析結果は、何らかの効果を保証しているものではありません。

※本記事について、取材のご依頼や引用、転載をご希望の方は下記よりお問い合わせください。
「お問い合わせ」はこちらリンクアイコン



研究記事一覧はこちらリンクアイコン