Study 研究

公開日: 2020.03.09

更新日: 2020.03.09

快適なBGMの音量(美容室)

ヘアサロンでの快適なBGM音量について、東京情報大学の西村明先生と実験を行いました。

 

女性にとって、ヘアサロンはちょっと特別な非日常を味わう空間。仕事や家事などで、普段なかなか自分の時間が取れず、たまに行くヘアサロンを楽しみにされている方も多いのでは?たまのお楽しみならなおさら、心地良く過ごしたいですよね。ヘアサロンでは、シャンプー台の水音やドライヤーの音、まわりの美容師さんとお客さんの声など、店舗内は様々な音で溢れています。そんな中でBGMが大きすぎるとうるさいし、静かすぎると気まずい…。ヘアサロンという空間で、BGMがどのくらいの音量レベルだと快適に過ごせるのか、検証実験を行いました。

実験概要

東京情報大学・西村明教授との共同研究で、ヘアサロンを利用するお客様にとって快適なBGMの音量を調査しました。今回の調査は、実験当日より3か月以内にヘアサロンでカラーリングやパーマをかけたことのある20~40代の女性22名を対象に、ヘアサロンにおける騒音(55dB/65dB)を再現した暗騒音に対し、それぞれ心地良いと感じる音量を設定してもらい、その数値を分析しました。その際、今回の実験では、サロンによって使用されるBGMのジャンルが異なる場合があることから、USENの番組からB-14「CONTEMPORARY VOCAL」、D-04「HOUSE MUSIC (125bpm)」、I-47「ハワイアン・レゲエ」、J-10「Piano Compilation」の4番組を使用して実験調査を行いました。BGMを異なる4つのジャンルの番組より1曲ずつ聴いてもらい、番組によって快適な音量が違うのかを調査しました。さらに、同時に4つのヘアサロンのイメージ画像を見て、各ジャンルのBGMに対してどのヘアサロンがふさわしいかをたずねました。

結果

騒音に対応して快適と感じるBGMの音量は変化することがわかりました。これはヘアサロンだけでなく、オフィスなども同じように、騒音に応じた結果となっています。D-04「HOUSE MUSIC (125bpm)」は、他の曲より大きめの音量が好まれることがわかりました。その差は平均で3~5dB程度なので、 音楽の雰囲気に合わせて若干大きめ、という感じでしょう。

また、他業種とは異なり、年代により快適だと感じる音量に差異が認められました(右グラフ)。これまで調査してきた他の業種では、年齢が上がるほどBGM音量が大きくなる傾向が見られましたが、ヘアサロンにおいては逆の結果となりました。20代と30代は、40代と比べ統計的に有意に大きな音量に調整することがわかりました。

今回の検証にあわせて、ヘアサロンのイメージとBGMの関係についても調査しました。ヘアサロンを、ナチュラル、シンプル、クール、クラシックの4つのイメージに分け、それぞれどのヘアサロンにどのBGMが合うかをたずねた結果です。

上のグラフはオレンジがナチュラルなイメージのヘアサロン、白がシンプルなイメージのヘアサロン、青がクールなイメージのヘアサロン、ピンクがクラシックなイメージのヘアサロンを表しています。白のシンプルなイメージのヘアサロンは、どのBGMにも票が入っていますが、ピンクのクラシックなイメージのヘアサロンはJ-10「Piano Compilation」に多く票が集まっていますね。

このことから、BGMを聴いて、そのイメージに合うヘアサロンを選んでもらうと、BGMによってふさわしいと感じて選ばれるサロンと、そうでないサロンがあり、このことは統計的にも有意でした。シンプルなサロンは人によって、D-04「HOUSE MUSIC (125bpm)」のような現代感、テクノ感を合うと感じる人もいれば、逆にI-59「ハワイアン・レゲエ」のような自然感、ナチュラル感が合うと言う人もいるようです。はたまたB-14「CONTEMPORARY VOCAL」のようなお洒落さ、J-10「Piano Compilation」のような落ち着いた楽曲を好む人もいました。

一方で、例えばクールなイメージのサロンでお琴の音色が流れていたら違和感を感じませんか?お琴の音色からは料亭やお正月といった和のテイストをイメージする人が多いのではないでしょうか。極端な例ではありますが、サロンイメージとBGMイメージが乖離する違和感は大きなものでしょう。

<実験監修:東京情報大学 総合情報学部 総合情報学科 西村明教授>

研究者からのコメント

ヘアサロンにおいては、BGMとして適する音量の個人差が大きく、かつ楽曲によって最適な音量が若干異なることが分かりました。ヘアサロンは他業種に比べて滞在人数も少なく、パーソナルかつ非日常的空間と捉えている人が多いため、BGMの音量の個人差に繋がったと考えます。そんな空間では、他人や場を意識して音量を調節するより、自分の居心地が良くなる音量に合わせます。その傾向は若い年代に顕著に表れるため、適する音量が大きかったのでしょう。
また、ヘアサロンの雰囲気によって、合っている音楽も異なることが分かりました。場の色彩によって音楽の印象や調和する音楽も変わり、視覚的な情報が音楽の感じ方を変えることが過去の研究より分かっています。ヘアサロンの雰囲気に合った音楽はBGMとしての効果をより高めると思われます。

東京情報大学 総合情報学部 総合情報学科 西村明教授

九州芸術工科大学(現九州大学芸術工学部)/音響設計学科卒業、同大学院修了 博士(芸術工学)/聴覚、オーディオ測定技術、音響情報処理の研究に従事

キーワード:ヘアサロン・美容室・音量・快適・居心地・音響設計

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・本ページの実験結果は、各種実験業務の委託により得た分析結果を記載したものです。当社並びに当該分析結果は、何らかの効果を保証しているものではありません。

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